21世紀COEプログラムからグローバルCOEプログラムへ
静岡県立大学大学院薬学研究科・教授
今井 康之
超高齢化社会に直面し、健康長寿に対する社会的要請は益々強くなっています。栄養学と薬学の有機的な連携は健康長寿の実現に必要不可欠な要素であり、双方の理念と方法論を習得し、新技術を創造し活用できる人材が求められています。また、新たな高次機能性食品の開発や食品からの医薬品シーズの探索においては食品科学と薬学両面からのアプローチが必要です。しかし、医薬品と食品の相互作用やそれらの安全性に関する研究は、個別に行われていますが、学問的に体系化されているわけではありません。平成14年度から5年間実施した21世紀COEプログラムでは「食と薬」、すなわち「食品栄養科学と薬学」の学問領域を融合し、健康維持に必要な保健機能食品や医薬品の開発、栄養状態の改善や効率的な医薬品の利用を実現する「健康長寿科学」を展開してきました。その結果、特定の食品を摂取した場合の薬効への影響、薬物の長期投与時における栄養状態の変動、薬物と食品成分の相互作用等に関して大きな成果をあげ、高い評価を受けています。
平成19年度からスタートしたグローバルCOEプログラムでは、隣接した領域にありながら知識・技術の同時習得が困難であった「食」と「薬」の学際的研究分野における人材育成のため、「健康長寿科学」学問体系として、生活健康科学研究科と薬学研究科を統合した 「薬食生命科学総合学府」とし、博士後期課程に「健康長寿科学専攻」の設置をめざしています。「健康長寿科学」分野の体系化により、「薬」と「食」の両方の視野を持った有為な人材の持続的な輩出が大いに期待できます。医薬品及び保健機能食品の統合的利用を実践する高度専門職業人と指導者の育成に加え、「薬」の構造・物性・機能を認識できる栄養生命科学者、生命維持基盤としての「食」の栄養生理を理解する創薬科学者を養成します。本拠点の研究成果発信が認められ、イタリヤやニュージーランドの研究者とともに、「薬食相互作用」や「高次機能性食品」の国際共同研究を開始しました。また、本事業を通して国際的に活躍できる若手研究者を育成するため、科学英語プレゼンテーション演習の単位化や米国オハイオ州立大学での英語研修、国際学会での発表等を積極的に支援しています。本拠点の大学院博士課程修了者は、米国、欧州、アジアを研究の場として、国際的な科学研究コミュニティーにすすんで参加しています。