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研究活動


研究成果:領域1


医薬品・食品の体内相互作用の解明とデータベース化

本学グローバルCOEプログラムにより得られた研究成果を紹介します。

研究領域の概要

ハーブなど機能性食品の有効性・安全性および医薬品との相互作用(併用効果)に関する臨床試験を、21世紀COEによって培われた医療機関との連携ネットワークを活用し実施します。具体的には、浜松医科歯科大学トランスレーショナルリサーチセンターとの連携があげられます。動物実験を当拠点で実施し、国内の医療機関との連携において、機能性食品の摂取状況および医薬品との併用状況の調査研究の範囲を拡大して実施します。また、米国アリゾナ大学との連携により、海外とのデータ比較を進めます。機能性食品成分を用いた国内での臨床試験を実施および海外のデータとの比較により、日本人における適正な使用量のエビデンスを蓄積し、データベース化します。さらに、薬物代謝酵素の遺伝子多型を解析し、食品成分と医薬品との相互作用に関し遺伝的背景をもとにした個別適正使用量推定のための基盤作ります。医薬品投与による栄養状態への影響や食事制限の必要性との関係を解明します。

・食品成分による薬物代謝酵素、薬物輸送担体への影響についての分子機構の解明
・特定の食品を摂取した場合の薬効の変化、長期的な薬物投与化における栄養状態の変化の解析
・機能性食品成分の安全性評価法の確立
・遺伝子多型を活用した、薬物と食品成分の相互作用と食事制限に関するエビデンスの蓄積
・食品成分や漢方薬成分の体内動態解析法の確立と医薬品との体内相互作用の解析
・食品相互作用データベースの構築


主な研究成果

・高血圧自然発症ラット(SHR)におけるニカルジピンの治療用量以下での薬物代謝酵素・トランスポーター発現量変動作用を明らかにしました。
・老齢ラットおよびヒト臨床試験においてイチョウ葉エキスが薬物代謝酵素のCYP2C9および3A4を誘導し、糖尿病治療薬トルブタミドおよび催眠薬ミダゾラムと相互作用を起こすことを明らかにしました。
・ノコギリヤシ果実抽出液による新たな排尿障害作用機構を明らかにしました。
・泌尿器科医との大規模多施設共同研究により、前立腺肥大に伴う排尿障害者における健康食品の摂取状況や臨床薬との併用効果の臨床データを集積しました。
・セントジョーンズワートの抗うつ作用が臨床薬と異なることを示唆しました。
・沢ワサビ葉抽出物がピロリ除菌において、抗生物質との相乗作用を明らかにしました。

薬食相互作用のデータベース構築について

本研究における「医薬品と食品の相互作用」について

  近年、高齢者人口の増加に伴い健康の維持・増進を目的として健康食品の市場が拡大している。ところが、これらは容易に入手可能なため不適切に摂取した結果、医薬品との相互作用を起こすことが知られている[1,2]。医薬品を有効かつ安全に使用するためには、健康食品と医薬品との相互作用の存在を常に念頭に置くことが重要である。現在、健康食品と医薬品との相互作用については種々報告されているが、既存の情報やデータベースは概略的内容が多く、また安全性を過大ないし過小評価したものなどもあり、医療専門職にとって必ずしも実用的とは言えない。また、これらの相互作用に関する有害事例に関しては、その原因物質や作用メカニズムが不明な点も多くある。
  必須栄養素以外の健康食品は食生活において摂取しなければならないものではないので、医薬品との相互作用が懸念される場合、現時点においては、摂取を禁止するように指導することが望ましいと考えられる。しかし、ビタミンやミネラルなどの栄養素やこれらを含む食品に関しては、栄養学的に摂取を禁止できない成分であること、ならびにこれらの成分を含むサプリメントの長期摂取は、アルツハイマー病、冠動脈疾患、糖尿病などの発症リスクの低下に関連するというエビデンス[3]もあることから、それらを適切に摂取することは疾患予防効果を期待する上で重要と考えられるため、医薬品と相互作用を起こす場合、その摂取方法には注意が必要である。つまり、医薬品の治療効果に影響を及ぼさず、かつ健康被害を受けないビタミンやミネラルの摂取量を設定しなければならない。しかし、この点に着目し、ビタミンやミネラルの摂取方法を詳細に検討した情報はほとんどないと思われる。本研究では、ビタミンやミネラルなどの必須栄養素と医薬品との相互作用に関する臨床報告の文献情報を網羅的に収集し、それらを科学的に分析・整理することにより、医療従事者や研究者が現場で活用できる包括的かつ実用的なデータベースを構築することを目的としている。

―ワルファリンとビタミンKの相互作用に関する適切なビタミンK摂取について―

はじめに

  ワルファリンは血栓塞栓症の予防・治療に広く使われているが、抗凝固能は、患者の年齢、日常の飲食物の摂取、併発疾患や併用薬の有無などのさまざまな要因によって変動しやすいため、定期的に血液凝固能検査を行い、ワルファリンの投与量を調節することにより長期にわたる投与が可能となる。ワルファリンは薬効の過度の強弱が致命的となるため、使用に際して患者自身も日常生活において注意しなければならない点が多く、特に生体代謝の必須微量栄養素であり、多くの食品に含有されているビタミンKにより作用が減弱するため、医師や薬剤師などの医療従事者が、ビタミンK含有食品摂取を禁止することや制限することの重要性を患者に対し的確に指導する必要がある。
  したがって、ワルファリンとビタミンKとの臨床上問題となる相互作用について精査し、解析を行うこととした。

ワルファリン
一般名ワルファリン (warfarin)
商品名アレファリン,ワーファリン,ワーリン,ワルファリンK,ワルファリンカリウム
薬理作用肝臓でビタミンK依存性凝固因子の第II(プロトロンビン)、VII、IX、X因子の生合成を抑制する。ビタミンK依存性凝固因子は、還元型ビタミンKおよびビタミンK依存性カルボキシラーゼの存在下において、その前駆体のアミノ末端側のグルタミン酸 (Glu) 残基が、γ-カルボキシグルタミン酸 (Gla) 残基に変換されることによって、正常な機能を持つ糖タンパクとなる。プロトロンビン、VII、IX、X因子は、Gla残基を有することによりCa2+と結合することが可能となり、血液中で凝血作用を発現することが出来る。ワルファリンは、ビタミンK代謝サイクルのビタミンK依存性エポキシドレダクターゼとビタミンKキノンレダクターゼの両酵素活性を非可逆的に強く阻害することにより、抗凝固作用や血栓形成の予防作用を示す[4]。
適応症深部静脈血栓症、肺塞栓症、心筋梗塞の二次予防、心房細動や人工弁置換術後の血栓塞栓症の予防

医療従事者の方へ (ワルファリンとビタミンKとの相互作用について)
相互作用の機序ビタミンKは肝でのビタミンK依存性凝固因子産生に関与し、ワルファリンの作用と拮抗する。従って、ワルファリン服用患者がビタミンK含有食品を不適切に摂取あるいは中断することにより抗凝固障害が生じる。
【ワルファリン服用患者において、推奨されるビタミンK摂取方法】
●安定した抗凝固状態を得るためには、約80 μg/日のビタミンK摂取が理想的であり、ビタミンK摂取の変動幅は250 μg/日以内にする。また、ビタミンKの豊富な食品の消費を制限するだけでなく、食事からのビタミンK摂取を一定にすることが重要である。

ビタミンKと凝固能の関係の解析結果
●マルチビタミン剤に含有されているような低用量(25 μg)のビタミンK摂取は、血漿中ビタミンKレベルが高い患者(約80-100 μg/日のビタミンKを日々摂取しているような患者)では、抗凝固治療に影響を与えないかもしれないが、日常的なビタミンK摂取が極端に低い患者の場合は、ワルファリンによる抗凝固治療に影響を与える可能性がある。
摂取禁止
ビタミンK含量が100 μg/100 g以上
納豆、モロヘイヤ、かぶや大根の葉、豆苗、ほうれん草、春菊、小松菜、にら、ブロッコリー、芽キャベツ
摂取制限
ビタミンK含量が5-100 μg/100 g
チンゲンサイ、キャベツ、おくら、さやいんげん、白菜、大豆もやし、アスパラガス、きゅうり、レタス、かぼちゃ、ピーマン、なす
摂取制限なし
ビタミンK含量が5 μg/100 g以下
穀類、果物類、芋類、キノコ類、魚類、牛肉(部位によっては10 μg前後あり)、豚肉、かぶ、レンコン、トウモロコシ、タマネギ、トマト、人参、大根、たけのこ、ごぼう、冬瓜

食品中ビタミンK含量の算出(文科省食品成分データベース)

解析結果
■ビタミンK摂取量とINRの変化の関係
ワルファリン服用患者において、有害作用が生じた食品中のビタミンK摂取量とその時のINRの変化の関係について解析を行った。

文献検索
■ 検索方法
1)
データベースPubMed
米国National Library of Medicine (NLM) 提供
検索期間1988年1月1日以降
言語制限なし
検索条件Clinical Trial, Mata-Analysis, Randomized Controlled Trial, Case Reports
選別方法検索した文献より、ビタミンKやそれを含む食品・補助食品とwarfarinとの相互作用を含む内容の文献を選別し、該当する論文を“一次検索資料”とした。

各一次検索資料の参考文献に対して同様な条件(ビタミンKやそれを含む食品・補助食品とwarfarinとの相互作用を含む)で内容を選別し、該当する論文を“二次検索資料”とした。
2)
データベース医学中央雑誌
特定非営利活動法人 医学中央雑誌刊行会 提供
検索期間1988年以降
制限ヒト,会議録を除く
選別方法論文種類が「解説/特集」「Q&A」は除外
アブストラクトの内容が、有害性の相互作用を示すもの
後はPubMedの場合に準じる

■ ビタミンK摂取量と抗凝固能 (INR) の変化の関係
ワルファリン服用患者において、有害作用が生じた食品中のビタミンK摂取量とそのときの抗凝固能 (INR) の変化の関係について、最小二乗法により回帰直線と相関係数を算出した。解析に利用した報告は、以下の条件を満たすものとした。

(1) 論文中に、食品中のビタミンK摂取量が記載されている。
(2) 血液凝固能のパラメータとしてINRあるいはトロンボテスト値 (TT値) を用い (TT値はINRに置き換えて解析した[4,16])、ビタミンK含有食品摂取前後のパラメータが論文中に記載されている。
(3) ビタミンK含有食品の摂取を開始して、有害作用が生じた(日常的にビタミンK含有食品を摂取し、ワルファリンによる抗凝固能は安定した状態だった患者が、急にその食品摂取を中断することによる有害性の症例は除外した)。


検索結果
全文献数 : 38報 (報告件数 : 60件)
■ ビタミンK含有食品・補助食品の種類
No.食品名報告件数(文献数)
1栄養補助剤(Osmolite, Ensure, Ensure® Plus, Isocal, Nutrilite 330、VK経腸栄養剤、フルカリック®、マルタミン®、ツインライン®)15件(11報)
2納豆14件(3報)
*うち、1件は健常人対象試験
3野菜(ほうれん草、ブロッコリー、キャベツ、レタス、カブ、カラシナ、人参、カリフラワー、グリーンピース、クレソン、菜の花)13件(9報)
4クロレラ4件(4報)
5ビタミンK含有マルチビタミン剤(海外の報告のみ)4件(2報)
6その他の食品:アサクサノリ、緑茶、噛みタバコ、ノニジュース、健康食品(ササロンとアルカロン)、野菜ジュース、大麦若葉7件(7報)
7通常の食事の影響(観察研究より、海外の報告のみ)3件(3報)
*症例報告は例数毎に1件と数えた。

文献タイトルリスト

論文要約

■ 臨床研究の種類
No.臨床研究の種類報告件数(文献数)
1データ統合型研究なし
2介入研究6件(5報)

* 1報はNo. 3と重複する
3観察研究4件(4報)

* 1報はNo. 2と重複する
4症例報告、ケースシリーズ50件(30報)
■ 参考資料
(両者の併用による有害性の相互作用以外の内容で、関連のありそうな文献)
No.内容報告件数(文献数)
1納豆の調理方法1件(1報)
2ビタミンKの供給源について1件(1報)
3不安定なINRに対する低用量ビタミンKの補給効果(併用の有効性)3件(3報)
4クマリン系誘導体とビタミンK1との相互作用に関する文献調査と、食事メニューの構築1件(1報)
5ワルファリン服用中の患者に対する、食事の管理(主にビタミンK)についての解説1件(1報)
6インターネット販売されている健康食品とワルファリンとの相互作用の危険性に関する調査1件(1報)
7ワーファリン服用患者におけるビタミンK含有製剤の投与指針1件(1報)
8青汁製品中のビタミンKの分析1件(1報)
9ワルファリンカリウムの薬効に影響を与えるビタミンK摂取量1件(1報)

参考文献
[1]
澤田康文. 薬と食の相互作用(上・下巻): 医薬ジャーナル社, 2005.
[2]
「飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用」研究班. 改訂3版 飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用: じほう, 1998.
[3]
久保明. サプリメントエビデンスブック-成分・疾患からみる研究論文-: じほう, 2006.
[4]
青﨑正彦, 岩出和徳, 越前宏俊. Warfarin適正使用情報 第3版: エーザイ株式会社, 2006.
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Franco V, Polanczyk CA, Clausell N, Rohde LE. Role of dietary vitamin K intake in chronic oral anticoagulation: prospective evidence from observational and randomized protocols. Am J Med 2004;116 (10):651-6.
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Kurnik D, Loebstein R, Rabinovitz H, Austerweil N, Halkin H, Almog S. Over-the-counter vitamin K1-containing multivitamin supplements disrupt warfarin anticoagulation in vitamin K1-depleted patients. A prospective, controlled trial. Thromb Haemost 2004;92 (5):1018-24.
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Khan T, Wynne H, Wood P, Torrance A, Hankey C, Avery P, Kesteven P, Kamali F. Dietary vitamin K influences intra-individual variability in anticoagulant response to warfarin. Br J Haematol 2004;124 (3):348-54.
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斉藤節子, 野水みさ子, 山川良一, 粟森和明. ワルファリンカリウム効果がツインラインで減弱された2例. 栄養-評価と治療 2000;17巻 (2号):291-5.
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松井健一, 五艘有紀子, 中川圭子, 平井忠和, 亀山智樹, 能澤孝, 麻野井英次, 井上博. 健康食品摂取後にwarfarinの作用が弱まり大腿動脈塞栓症を発症した僧帽弁狭窄症の1例. 心臓 2001;33巻 (6号):525-8.
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Gogstad GO, Wadt J, Smith P, Brynildsrud T. Utility of a modified calibration model for reliable conversion of thromboplastin times to international normalized ratios. Thromb Haemost 1986;56 (2):178-82.

本研究について
  本研究は静岡県立大学グローバルCOEプログラム「健康長寿科学教育研究の戦略的新展開」(拠点リーダー:今井康之) により行われたものです。
  また,本研究成果は藤野知美,伊藤由彦,瀧優子,柿澤希美,尾上誠良,今井康之,奥直人,野口博司,伊藤邦彦,小林裕和,大橋典男,合田敏尚,木苗直秀,梅垣敬三,渡邉裕司,山田静雄 を始め、内外の多くの方のご協力を得て作成したものです。

資料


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